小児眼科

子どもの視力

子どもの視力は、誕生してから実際に両目でものを見ることで発達します。生まれてすぐは明るさがわかる程度ですが、生後3か月で色や形を認識しはじめ、生後半年で動くものを目で追うようになるなど、1歳までに大きく発達します。その後、6歳くらいになるとほぼ大人と同じ程度の視力になるとされていて、10歳くらいには視力の発達が終了します。
視力が成長するこの期間に両目でしっかり見る経験ができないと、眼鏡などで矯正しても視力を得られない弱視になり、成人してからも改善できません。問題がある場合には、3歳くらいから適切な治療を開始することが重要です。お子様の視力測定は成人に比べて調節力が強く、また協力を得られないことも多くあり、大変難しく専門性を有します。医師の判断のもと、特殊な点眼薬を点眼した後に視力測定をする必要が生じる場合もあります。その視力測定により隠れた弱視が判明する場合もあるので大変重要な視力検査となります。検査後は特殊な点眼薬の作用により1週間程度焦点が合いづらい・ぼやけてみるといった症状が出ます。検査後1週間以内に重要な試験やスポーツの試合などが無い時に検査をするといいでしょう。
当院では、子どもの弱視、斜視、近視などのお子様の目の診療も承っています。お子様の視力や「見る」際の様子などで気になる症状やご不安がありましたら早めにご相談ください。

こんな症状に気付いたら早めにご相談ください

  • 片目だけまっすぐ向いていて、反対目が内側に寄っていたり、外側に外れていたりすることがある
  • 見る際に目を細める
  • 目を気にする
  • 頻繁に目をこすったり触れたりする
  • 絵本やテレビなどの画面に顔を近づける
  • 目が白っぽく光るように見えることがある
  • 片目だけでものを見ている

弱視

目から得た視覚情報は脳に伝達され、それを認識することで「見る」ことができます。弱視は斜視や屈折異常をはじめとした様々な疾患によって両目で正しく見ることができず、適切な刺激を受けなかったことで視力が発達していない状態です。視力は10歳くらいまでに発達を終えるため、できるだけ早期に治療を開始することが重要です。
斜視や屈折異常がある場合、よく見える方だけ視力が発達し、もう片方が弱視になることがあります。その場合、片目ではよく見えていますが、両眼視ができないことで立体感や距離感を把握できず、スポーツや安全に問題を生じる可能性があります。この問題は将来的な眼鏡やコンタクトレンズ装用では改善しません。少しでも気になることがありましたらお気軽にご相談ください。

斜視

ものを見る際に、片目の視線が別の方を向いている状態です。視線のずれる方向によって、内斜視・外斜視・上斜視・下斜視などに分かれ、両目が斜視ということもあります。斜視は、目の周囲にある筋肉などの影響で生じることもありますが、脳疾患や全身疾患の症状として起こることもありますので、原因を確かめることが重要です。
また、斜視の場合、ずれている方の目が弱視になることがあります。幼児期に両目で正しくものを見ることができないと立体感や距離感をつかめなくなって将来の視力に大きな支障を及ぼす可能性があります。両眼視のためには5歳くらいまでに適切な治療をスタートさせる必要があります。目のずれが大きくなってコンプレックスになることもありますので、「もしかしたら」と思ったらご相談ください。斜視は状況が時々刻々と変化する場合があります。ご自宅でリラックスしている際には斜視がひどいのに、クリニックに来て緊張してしまうとあまり斜視がはっきりしないこともあります。ご自宅で目の向きが気になった場合は、その時のお子様の顔写真を携帯などで撮影して頂くと、診療の際に大変助けになりますのでやってみてください。

仮性近視

レンズの役割を果たしている水晶体の厚みを、毛様体筋という筋肉の力でコントロールして様々な距離に焦点を合わせています。遠くを見る際には毛様体筋がゆるんだ状態であり、近くを見る際には毛様体筋が緊張して水晶体を分厚くしています。近距離のものを見続けていると毛様体筋の緊張が続いて緊張が解除できなくなってしまうと仮性近視の状態になります。仮性近視は睡眠や休息をしっかりとることで回復します。特にお子様に生じやすいと言われております。現在の生活は近距離に焦点を合わせる時間が圧倒的に長く、室内では毛様体筋が緊張し続けます。スマートフォンやタブレットなどの画面を見続けることは特に大きな負担になります。近視が仮性近視であるのか、本物の近視であるのかの診断が大変重要であります。当院では近視が仮性近視なのか本物の近視なのかしっかり診断して治療を行っていますので、お気軽にご相談ください。

色覚異常(色覚多様性)

網膜にある3種類の錐体細胞がそれぞれ赤色・緑色・青色を認識することにより色を自覚します。3種類の錐体細胞全てが正常に機能することにより正常な全ての色覚が得られます。生れたときから3種類の錐体細胞のうち一部もしくは全部に、機能の低下もしくは機能消失があった場合、正常の方と比較して色覚が違うように見える場合があります。大多数の方と色覚が異なる状態を色覚異常といい、遺伝的な原因によって生じる先天色覚異常と、眼疾患の症状や外傷などによって生じる後天色覚異常に分けられます。先天色覚異常は日本人男性の20人に1人(5%)、日本人女性の500人に1人(0.2%)の頻度で生じるとされています。大多数の方が異なると感じる色が同じ色に見えてしまう、薄暗い場所では色の区別がしにくいなど、程度は様々です。
平成26年以降、施行が中止されていた学校における色覚検査は、希望者全員に施行することに変更されました。そのため最近では色覚異常の可能性を指摘された学校検診の紙を持参して眼科受診する患者さんもいらっしゃいます。
早期に発見して生活上の適切な対処方法を身に付けておくと安心できます。

先天性鼻涙管閉塞症

涙は目の中で循環しており、常に新鮮な涙が目の表面を潤っています。古くなった涙は目元にある涙点から涙道を通って鼻の方に流れていきます。生後間もない時期には、この涙道の発達が未成熟な場合があり、涙がうまく鼻の方へ排出されないことがあります。このような状態を先天性鼻涙管閉塞症といいます。鼻に排出されない涙は目の中にたまり、常に涙目の状態となります。時には目の周りがただれることもあります。最初は点眼治療で様子を見ることとなり、9割以上は自然開通すると言われていますが、生後6か月~9ヶ月でも改善を認めない場合は先天鼻涙管閉塞開放術をお勧めしています。手術の詳細は、先端が丸くなっている針金状の金属を涙点から挿入し、鼻の方向へ進めていき、閉塞部位を破って涙道を開放させます。当院では点眼麻酔により手術を行っています。手術によりほとんどの症例は鼻涙管が開放され治癒しますが、鼻涙管が極端に曲がっている場合や閉塞が極端に強い場合は全身麻酔による内視鏡併用が必要になります。そのような場合は専門の施設を紹介させて頂きます。

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