結膜とは
結膜はまぶたの裏側や白目の部分を覆っている薄くて透明な膜です。外部にさらされている部分ですので、感染などを起こしやすく、充血を起こすこともよくあります。
結膜炎細菌やウイルスの感染による感染性結膜炎や花粉症などのアレルギーよるアレルギー性結膜炎などがあります。適切な治療法や対処法が異なりますので、疑わしい症状があった場合にはできるだけ早く診して、適切な治療を受けることが重要です。
アレルギー性結膜炎
目やその周辺のかゆみ、白目の充血が主な症状で、原因になるアレルゲンは、花粉やハウスダスト、ダニ、カビ、ペットの毛など多岐に渡ります。コンタクトレンズ装用によって生じる場合もあります。こうしたアレルゲンによるアレルギー反応が結膜に現れるものがアレルギー性結膜炎とされます。中でも、10歳くらいまでの男児に多い春季カタルは重症のアレルギー性結膜炎で、激しいかゆみや目やにの症状を起こします。
季節性アレルギー性結膜炎
花粉症によるものが圧倒的に多く、中でもスギ花粉によるものが大半を占めます。西日本では黄砂アレルギーによって生じていることもあります。最近では日々の花粉情報や黄砂情報を掲載している天気予報アプリも増えていますので、こまめにチェックして適切な対策を行うことで症状の軽減につなげることができます。
通年性アレルギー性結膜炎
年間を通じて症状を起こします。ハウスダスト、ダニ、カビ、ペットの毛・フケ・唾液などによって生じます。症状軽減のためには、室内をこまめに清掃してアレルゲンにできるだけ触れないようにすることが重要です。
コンタクトレンズに対するアレルギー性結膜炎
コンタクトレンズの合併症として一番多いのはアレルギー性結膜炎です。コンタクトレンズは体にとって異物であり、異物を除去しようとする体の正当な反応がアレルギー性結膜炎です。反応の強さには個人差があります。症状としては、目のかゆみ、目やにが出る、コンタクトレンズがずれるなどがあります。症状を起こしやすい順としては、2weekソフトコンタクトレンズ、コンベンショナルソフトコンタクトレンズ、1dayソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズとなります。症状が強い場合は、コンタクトレンズの使用を中止して点眼治療を行います。その後軽快した際にはコンタクトレンズが再開となりますが、アレルギー性結膜炎が再発した場合はコンタクトレンズの種類を変更するなどの対応が必要になる場合もあります。コンタクトレンズ装用者は、コンタクトレンズ定期検診を欠かさず継続することが重要です。
発症予防のために
アレルゲンに触れる機会を最小限にすることで発症を抑制できます。そのためにもアレルギー検査を受けて原因を特定することが重要です。
花粉が飛散時期に外出する際には、マスク、眼鏡、帽子を着用し、なめらかな素材のコートを羽織ったり、帰宅したら玄関に入る前に全身を払って花粉を落としましょう。リビングや寝室など長時間過ごす部屋には花粉を持ち込まないように注意し、掃除をする際にも花粉を巻き上げないようにします。
また、こまめな掃除が重要です。日本の住宅はダニが発生しやすいとされているため、フローリングの場合でも掃除機をしっかりかけてください。また、ソファは布ではなく皮を、カーテンはブラインドにするなど、部屋に布製品を極力置かないようにすることも効果が見込めます。布団は干して、部屋に入れる前によく払い、掃除機で吸ってください。
細菌性結膜炎
結膜に細菌が感染して生じる疾患です。充血や目やにを主症状として発症します。ばい菌が目に入って発症するのですが、原因としてはマイボーム腺機能不全や鼻涙管閉塞など多岐にわたります。
治療
抗生剤点眼にて数日で軽快する場合が多いです。原因細菌は多岐にわたるため、抗生剤の効きにくい細菌の場合は治癒が遅れることもあります。その際は、原因細菌を検査で特定し、その細菌に合った抗生剤に変更することも重要です。
ウイルス性急性結膜炎
ウイルス感染による結膜炎も受診する方が多い疾患です。中には感染力が非常に強いものもあり、人から人へ容易にうつります。感染を広げないためにも早期の受診と適切な治療、対応が不可欠です。目の充血、目やに、目の痛み、かゆみ、異物感など疑わし症状がありましたら、できるだけ早く受診してください。
流行性角結膜炎
感染力が強いアデノウイルスによる結膜炎で、一般的には「はやり目」と呼ばれています。潜伏期間は1週間程度で、目やにや充血、腫れ、痛みを起こし、発症から10日程度で症状が改善へ向かいます。乳幼児では症状が乏しい場合が多いですが、成人が発症した場合には急激に悪化する可能性があるため、早めに受診してください。なお、年齢に関わらず完全に治るまでしっかり治療を続けないと角膜に濁りが残って視力に悪影響を及ぼしたり、ドライアイ発症や結膜のトラブルを生じたりする可能性があります。
咽頭結膜熱
アデノウイルスによる夏かぜの1種で、「プール熱」と呼ばれています。感染力が強いため注意が必要な疾患です。潜伏期間は5~7日程度で、目やにや充血、腫れ、痛みといった目の症状だけでなく、のどの痛み、発熱、だるさ、下痢などを生じることもよくあります。発症から10日程度で改善に向かいます。タオルの共有などでも感染することがありますので、注意が必要です。
急性出血性結膜炎
最初に目がゴロゴロして、その後、結膜下出血で鮮やかに赤い充血を起こします。潜伏期間は1~2日程度で、症状がかなり顕著なので慌てると思いますが、結膜下出血はそのうち吸収されて解消します。アポロが月面着陸した時代に流行したことで「アポロ熱」と呼ばれています。
ウイルス性急性結膜炎の治療
ウイルスには抗菌剤が効かず、ウイルス性急性結膜炎に対しては有効な治療法がなく、炎症を抑える対症療法が中心になります。細菌感染の合併を防ぐために、抗菌点眼薬を使用することもあります。
自然治癒を早めるためにも、休養や睡眠をしっかりとって、バランスの良い食事を心がけてください。
感染予防対策
他の方に感染する可能性があるのは、流行性角結膜炎や咽頭結膜熱では約1~2週間、急性出血性結膜炎では3~4日とされています。感染がわかったら、この期間は特に注意して過ごす必要があります。感染形態は接触感染で、手で触れたものやタオルの共有などによる接触で感染しています。周囲に感染を広げないためにも、しっかり対策をとってください。
- タオル、洗面用具などを共有しない
- 入浴は最後によく泡立てた石鹸でしっかり手を洗って、流水でよくすすぐ
- 保護者がケアをした場合にも、すぐにしっかり手洗いをする
- 休養や睡眠をしっかりとる
- できるだけ外出を避ける
- 医師の許可があるまで、幼稚園・保育園・学校を休む
- プールは医師の許可が出るまで入らない
結膜下出血
結膜下の血管が切れて出血し、白目の部分に鮮やかな赤い出血が起こっている状態です。くしゃみ、咳、鼻をかむといった日常的な行為や、アルコールの過剰摂取、月経、ケガ、水中眼鏡やゴーグルなどによる圧迫などを原因として生じます。目の手術後や、血がサラサラになる内服薬を服用している方に頻発します。基本的には特に心配はありません。主な症状は赤い充血と、ゴロゴロする違和感程度で、痛みや視力低下などの症状を起こすことはなく、ほとんどの場合は数週間程度で自然に吸収されますが、解消まで数か月かかることもあります。
治療
外傷によって起こった場合には早めの受診が必要です。それ以外の場合でも、繰り返し生じる、かゆみや痛みを伴う場合には疾患が関与している可能性がありますので、受診してください。
翼状片
目頭から黒目に向かって結膜が三角形の形で伸びていく疾患です。発症の原因ははっきりわかっていませんが、紫外線によるダメージの蓄積が関与していると考えられていて、発症は高齢者に多い傾向があります。充血や異物感をともない、進行して黒目の部分にまで結膜が伸びてしまうと見え方に視力や視野に悪影響を及ぼします。
治療
悪性ではないため放置しても特に問題はありませんが、進行して見え方に問題が起こる可能性がある場合には治療が必要です。また、整容的な問題もありますので、そうしたお悩みがある場合も手術をお勧めしています。充血や異物感が気になる場合には、点眼薬による治療を行うこともあります。
結膜弛緩症
結膜は眼球が動いて上下左右を見ることができるようにある程度のゆるみがありますが、必要以上にゆるんでたるみを生じる結膜弛緩症では、異物感や違和感を起こします。ドライアイなどの眼疾患と合併することが多く、それによって疾患の悪化につながることがあります。まぶたに違和感がある場合には早めにご相談ください。
治療
点眼薬による保存的療法を行います。眼疾患の悪化原因になっていて、薬物療法では改善しない場合には手術が必要です。結膜弛緩症の手術を検討される場合には、連携している医療機関をご紹介して、スムーズに適切な治療を受けていただけるようにしています。